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interview with 橋口靖弘(TAGSTA)

デザイニングガイドマップからのスピンオフ企画として、紙面上では伝えきれなかった街や場所の魅力を、デザイニング展サポータースタッフがそれぞれのまちの紹介者にインタビューに伺いました。まちの紹介ページと合わせてお楽しみください。


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薬院の伝説のcafe、Dalahast Cafeを突然クローズさせ、『どこにでもないスタイル、誰もがやらない、男性的でシンプル』。既存のcafeの概念をぶち壊して新しいスタイルの店、TAGSTAを作り上げた橋口さん。そこには惰性を嫌い、真摯に自分の内面ととことん向き合い、新たなカルチャーを産み出そうとするアーティストの姿があった。橋口さんの言葉から、つながり、コミュニティーフリー、どこにでもない、地域のなかの…と言うよりは、世界の中のTAGSTA、といった言葉が幾度となく出て来る。究極の個人主義。一見、『カッコ良すぎて入りにくい』店内はひとたび足を踏み入れると、誰もが尊重される病み付きになりそうな居心地の良い空間だった。

取材:水田 撮影:長原 (デザイニング展サポータースタッフ)
以下_ 橋口靖弘:橋口 Designing?:D


ーお仕事についてー


D ちょっと変わったスタイルのお店だなと思うんですが、はじめられたきっかけというのはなんだったんですか?

橋口 普通のカフェスタイルに飽きちゃったんです(笑)。もうカフェが飽和状態というか。2003~2009年くらいに、薬院でDalahast Cafeっていう、北欧スタイルのお店をやっていました。スウェーデンの木彫りの馬っていう意味で、それをモチーフにしたカフェです。そこがまず土台にあるんですが、そこでは北欧の雑貨を買い付けにいったり北欧の文化を扱ったりしていました、まだ北欧ブームがくる前のことです。
そこは普通にテーブルがあって、7~8割が女性客のほっこりした感じのカフェだったんですが、カフェブームもあって、カフェが誰でも出来る感じになって来て…『もう、いいかな』と思いました笑。で一旦Dalahast Cafeをクローズさせました。その2年後にTAGSTAを始めることになったんですが、始めるにあたって。今迄にない雰囲気の、全然違う感じでやってみようと思いました。男性っぽい雰囲気のお店にしたかったんです。カフェっていうカテゴリーが嫌だった。余計なものを総て削ぎ落した必要最小限のシンプルなスタイルのお店にしました。だからランチもないし椅子もテーブルもない。余計な装飾もなし。…そして朝型。朝7時から夜8時迄。最初は利益度外視。飲食店は朝になればなるほど単価が落ちるので、みんなやらないんです。みんながやらないからやりました。新しいスタイルを作りたかった。今回女性受けは考えなかったんですが、意外にも画家の大橋歩さんが『可愛いカフェには男性はいかないけど、かっこいいカフェにはかっこいい女性は来るよね』みたいにいわれて、なるほどな、とも思いました。

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ただ、実はシンプルが一番難しくて、シンプルであればあるほど、根底のものがしっかりしていなければならず、さりげなくひとつひとつのものにこだわりました。そのこだわりも全面に出しすぎない感じにしました。カップにしても今は廃盤となった、ARABIAロゴのTEEMAのものを使っています。スタイルだけなら誰にでも出来ると思うんですけど、細部に徹底的にこだわってどこにでもないお店にしたかったんです。見た目は勿論大事だし、でも見た目だけでもダメだし、中身も伴っていないと絶対にダメなんです。敷居が高そうに見えるらしいですが、そこを踏み越える勇気をもって入る感じもいいんじゃないかと(笑)。

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D それに、この場所は無音ですよね。

橋口 最初は色々、音のことも考えていたんですが、ある程度ハコが出来た時に、ふと、無音がいいんじゃないかなと思いました。ギャラリーがあるのも大きいんですけども。ギャラリーをカフェの添え物みたいにしたくなかった。ぼく自身は、どこどこ風にしたい、とかいうのがあった訳ではなく、あえて余計な情報を仕入れずに純粋にどこにでもない感じをイメージして作りました。ギャラリーも何でもありのレンタルスペースではなくて、画家のYABUさんや嫁(トレネ店長)と話しながらセレクトして海外アーティストを含めて展示したり、トークショーしたりしてます。カルチャーを発信したり生み出す場所になって来たんではないのかなと思っています。

D 音楽イベントもちょこちょこあっているようですが、無音なのは意外でした。

橋口 BGMって、時によって暴力に変わるときがあると思ってるんですよ。BGMのなずなのに(笑)。ライヴで聴くのは、凄く好きなんですけど、ただ垂れ流されるだけの音楽っていうのは嫌なんですよ。
根幹が大事なので、無駄なものはつけたくないんです。なんにもなくていいんじゃない?っていう。

D 武末さん(organ)の夜間学校も開催されてましたね。

橋口 よくあるトークショー、っていう感じではなく、色んな人が自由にしてたりする感じで、凄く面白かったですよ(笑)。色んな出会いがあって、出会った人たちが何かをやりだしたりして、なにかのきっかけづくりの場所になってるようなのも楽しいです。

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ーまちについてー

橋口 春吉はまだ2年なんですが…以前は春吉に対するイメージは実は良くなかったんです、夜の街、春吉、住吉、中州、みたいなディープな感じ。TAGSTAを始める時、地域では選ばなかったんです。まず、TAGSTAのイメージがあって、周りのビルの感じとか、ここがぴったりだった。地域ではなくてハコで選んだ、という感じ。

D 住んでイメージ変わりましたか?

橋口 変わりました。春吉でもここは九電も近くて、サラリーマンが多くて住んでる人も多い。車も多いし、朝は通勤なんかで意外と人通りが多いんです。柳橋やサンロードもあって、長年住んでいる人たちが沢山いる、地元に根付いた土地なんだなと思いました。

D 立ち飲みで男っぽい、っていうと、屋台のイメージを思ったからなのですが、接客?みたいなことはされるんですか?

橋口 もちろん必要に応じてしますよ(笑)ただ、ここは椅子を置いてないし、コミュニティーフリーなんですよ。椅子とテーブルがあると二人だけの空間、になっちゃいますけど、立ち飲みは色んな所から会話が投げられるんですよ。中州の屋台に近いですね。薬院の時とはお客さんの層が全然違う。

D まちとどう関わりたい、とかってありますか?

橋口 とくにこのまちをもりあげよう、とかっていうのはないんです(笑)コミュニティをローカライズにカテゴろう、っていうのはなくて、、ちっちゃく纏まろうっていうのじゃなくて、福岡じたいが東京とかロンドンとか世界中と対等に繋がれる様な場所であった方がいいのかな。福岡はポテンシャルはあるはずなのに、ビジネスはできてないから…。もったい無いんだよね。こないだ京都の人を福岡案内しようと思って、昼間案内する所がなくて困りました。むこうは本場だし、、(笑)。
デザイニングにしても、もっとスポンサーがつけばいいんだけど、福岡にはあまりデザインとかそういう所にお金使ってくれる企業が少ない。大きいお金が動かない。

D でも、これからはスモールビジネスでもいいかもしれませんね。

橋口 福岡はそういうのはあってるかもしれないよね。何かしてくれたら、必ずしもお金、だけで返すんじゃなくて、ものの交換とか、プラスできることをやるとか。それには人とのつながりが大事ですしね。

D 態度経済、みたいな事ですよね。それは普段の橋口さんから感じますね。

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ーデザイニング展出展内容についてー

橋口 トークショーと展示があります。浅野藝術株式会社、っていうところの『eN』っていうプロダクトがあって、その展示兼販売。鈴木啓太くんと浅野さんのプロダクトデザインに関するトークショーがあります。

D 展示のおすすめのひとことをください。

橋口 まずトークショーに来て頂いて話をきいて、また展示を見たら、視点が変わるんじゃないでしょうか。


D 10年後、この街はどうなっていると思いますか?

橋口 サンセルコは変わってるでしょうね(笑)。建て替えなのか無くなるのか。ここは…何かの達成感がでてしまうと、やめているかもしれない。必要と感じていたらやってると思う。とはいえ、街自体は10年後は意外となにも変わってないかも。柳橋とか、商店街とか、変わらずあるんじゃないのかな。変えちゃいけないものとして。もちろん、渡辺通りはどんどん変わっていく必要性もある。ポピュラーな部分はどんどん躍進すべきだし、アンダーグラウンドの部分は恒常的というか不変であって欲しい。

D この土地に影響を与えたいとかいう気持ちはあったりしますか?

橋口 ここを目指して来てくれて、他に案内する様な所があったらいいな、とは思いますね。

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FUKUOKA AREA MAP | F. 渡辺通り・春吉・中洲エリア
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