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interview with 酒井咲帆(写真家・アルバス)

デザイニングガイドマップからのスピンオフ企画として、紙面上では伝えきれなかった街や場所の魅力を、デザイニング展サポータースタッフがそれぞれのまちの紹介者にインタビューに伺いました。まちの紹介ページと合わせてお楽しみください。


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ご飯も食べれる『まちの写真屋』ALBUS、4月30日に5周年をむかえました。オーナーの酒井咲帆さんに、ALBUSのおしごとのこと、子どもに対する思い、まちについてのお話をうかがいました。写真はあくまでも手段であり、ALBUSは考え方の実践の場、と語る酒井さん。すべてを同じように照らしてくれる暖かいその日の日差しそのままのフラットな目線でゆっくりと、静かにひとつひとつの質問に丁寧に答えてくださいました。

取材:水田 撮影:長原 (デザイニング展サポータースタッフ)
以下_ 酒井咲帆:酒井 Designing?:D


=ーお仕事についてー

D 酒井さんは2006〜2009年の間、九州大学USI子どもプロジェクト(以下子どもPJ)に所属し、子どもの居場所づくりの研究に携わったとの事ですが具体的にどのような活動をされてたんですか?

酒井 子どもPJでは、大人の中にある子ども性も含むといったような『子ども』という概念を幅広く捉え、その『子ども』感をキーワードに、子どもと大人が共生した社会づくりを目指していくための実践的な研究プロジェクトでした。具体的には、子どもを究極のユーザーとしてとらえ、子どもたちに最も身近であり、同伴するメディアでもある絵本に着目し、「絵本のある子どもの居場所」として絵本カーニバルを開催してきました。普段使われてない空間を利用し、現地の方々と協力して絵本を選書し、テーマを設けて絵本を並べます。必ず表紙を見せて並べることで、絵本を手に取りたくなり、その場も劇的に変化します。場づくりの方法も研究を重ね、持ち運びが可能な仕様にしたり、ゴミが出ないようにリサイクルできるようにしたり、大人も楽しめるような場にしたり、絵本を落ち着いてよめるような場をボランティアの方々と考えながら作りつづけました。これらの活動は2006年に、グッドデザイン賞の受賞という社会的評価にも繋がりました。

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ー写真家の活動についてー

D 写真集『いつかいた場所』は、酒井さんが偶然訪れた富山県の村の子どもたちを10年間撮りつづけたものと聞いていますが、具体的なエピソードを聞かせてください。

酒井 10代終わりの頃、目的のない旅をしていてたまたま降りたバス停のところにいた子どもたちと出会ったことから始まりました。特に写真家になりたい、とも、写真集をつくりたい、とも考えてもみなかった頃のことです。小さな村なので、写真を撮っていることが村の噂にもなりつつあり、学校の先生から呼び出しがあり、校長先生が代わる度に誤解を解きに行った記憶があります。今では、ぜひ写真撮って下さいと頼まれるようになりました。(笑)さらにその村の学校が廃校になる時に、学校で展覧会を子どもたちと一緒にさせていただきました。その時は、村中の方々が写真展を見に来てくれて、昔の写真に子どもたちの成長を重ねて涙される方もいらっしゃいました。

D 人との関わりの中で「写真」を用いられているように思いますが、写真屋「ALBUS」ではどういうことをなさっているのですか?

酒井 写真は目的を得るための手段であると考えていると同時に、ALBUSもそのように捉えています。例えば多くの方が家族写真を撮影しに来るとき、ただ写真を残したいということが目的なのではなく、この日の記憶をできるだけいいものにしたい、いつもは自分を除く他の家族の顔しか見れないけど、全員揃った家族の顔を見て改めて家族を感じたい、子どもの姿をいつもとは違った視点で観察してみたい、といったような内在化している目的を叶える場としてALBUSがあると考えています。そういう姿を写して見てもらうことで、残っていく写真の役割が増えていくように思います。
さらに言えば、撮影する場をよりよい日常の場へと変化させていくことが、ALBUSの目的でもあります。極端に言えば、そこが家や保育園と言った、子どもたち自身の日常でもあり、子どもに寄り添う場であればあるほど、いい写真が撮れる場であると言えます。そういったことを考えながら、場を作っていきたいと考えています。

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ーまちについてー

D ALBUSと警固のまちとのかかわりについて教えてください。

酒井 この辺りの地域は、よそもん(他府県からの移住者)がお店を出していることが多く、よそもんにやさしいまちと言えると思います。オーナー同士の顔も見え、どのお店に行っても「ただいま」と思えるように関わってこれたことに感謝しています。

D このまちとどう関わっていきたいですか?

酒井 これからずっと変わらず続けていきたい、という使命感みたいなものはないんですよ(笑)。続けることが目標になってしまうと、目的からずれてしまうので。目的の置き方が大事、というか。ゆくゆくは、保育園がやりたい、と思っています。

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ーデザイニング出展内容についてー

D 【Doodles】LeBrie Rich & Bill Willの展示について教えてください。

酒井 ポートランドを拠点とするLeBrie Rich & Bill Willの二人はカップルなんですが、Bill Willは芸大の先生だったりしてパブリック・アートやポリティカル(政治的な)アートの分野で活躍しています。ポートランドは環境先進国と言われていたり、DIYの思想が根付いていたりします。私も昨年行ってきましたが、市民運動により守られてきた場があったり、国立公園が多いことにも驚きました。自然も偉大で全米の中でも住みやすいまちNO.1なんだそうです。

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10年後、このまちはどうなっているとおもいますか?

酒井 障害がある人もない人も、子どもも大人も、住みやすいまちになるといいなと思います。そのためには、社会的弱者と呼ばれている人たちにもっと目を向けて心を寄せていくことが大事だと思います。そういう意味では変わっていくべきことが山ほどあるような気がします。そういうことを乗り越えた上で、多様な価値観が行き交う場(まち)になっていたらいいなと思っています。


FUKUOKA AREA MAP | C. 警固・赤坂エリア
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