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interview with 斉藤裕輔

デザイニングガイドマップからのスピンオフ企画として、紙面上では伝えきれなかった街や場所の魅力を、デザイニング展サポータースタッフがそれぞれのまちの紹介者にインタビューに伺いました。まちの紹介ページと合わせてお楽しみください。


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「カフェと形容し難いカフェ」

 interview with 斉藤裕輔(カフェ・ガレリア代表)

天神・大名エリアに永く君臨し続けるcafe galleria(以下 galleria)。今回のデザイニング展で天神・大名・北天神エリアのまちの紹介者を努める代表の斉藤氏にgalleriaと福岡について掘り下げて頂いた。話を終え、我々はgalleria、そして斉藤氏の持つ哲学、そしてこの福岡の街への思いを垣間見られた様な気がしている。
先ずは独特の風景を生み出し続けるgalleriaについて。揺らぐ事の無いコンセプトを斎藤氏自身の口から語って貰った。

取材:山路 祐一郎 撮影:朴虎哲 (デザイニング展サポータースタッフ)
以下_ 斉藤裕輔(カフェ・ガレリア代表):斉藤 Designing?:D


D 先ず、このお店galleriaについてお聞かせください。

斉藤 トレンドに鈍感に。日常的に利用して貰いたいな、と。その中で食を入り口にしたいなと言うのが有りました。食を入り口にすると、今度そこに音楽が有ったり、芸術が有ったりと文化が追随してくる。それが一番僕らの主張したいところです。

D  galleriaでは本当に多岐に渡った催し物を拝見します。にもかかわらず、ここに訪れる人達がそれぞれにカフェ・ガレリアらしさを感じ取っていると思うのですが?

斉藤 選んでいるわけではないですけれど、自然とそういう人たちが集まってくると、ドンドンそれが連なって来るんだろうな、と思います。特段フィルターを掛けているわけではないです。

D イベントを企画するときに何か『こういう風景をつくろう』と心掛けている所は有りますか?

斉藤 先進的じゃない。アナログであるべきというのは凄く大事にしています。やっぱり人が作って人がサービスしてという人有りきなので。

D ずっとお店を続けて来られて、galleriaで特に「あぁ、良いなあ」と思われるお客さんの風景を教えてください。

斉藤 お客様が時間を気にせずゆっくりされていたりとか。あまりビジネスに繋がっていない、回転が悪い感じ。お客様のゆとりを感じた時に良いなあと思います。それと、やっぱり次世代・学生の子達が集まっていて積極的に活動してくれている所ですね。そこはずっと支援し続けたいし、彼らが社会人になっても引き継いで貰いたいです。

IMGP1218web ー galleriaから福岡の街を見つめ続けている斎藤氏。その目に映る変化や特色はどんなものなのだろうか?街の中心から、かつ俯瞰した視点で的確に伝えてくれている。ー


D そんな学生達の成長とともに、この福岡の街の成長についてもデザイニング展の冊子ではお話を頂いていました。その変化について、これまでとこれからの2つの視点からお聞かせ頂けますか?

斉藤 これまでについては、結構東北の震災がきっかけだったと思いますけど、福岡への移住者が増えて一気に150万都市になりましたし、今後も増えて行くんだろうと。ただそれをテクニカルに計算している人達がいて、関東とかの大企業が福岡に入ってきています。今までは需要と供給のバランスが上手く崩れていて、例えば関東資本の企業が福岡に入ってきても上手く行かなかったのが、最近はそれが急成長しているのを危惧しています。地元の人達、九州の人、福岡が好きだった人のエネルギーが集約しないとこの街はミニ東京になってしまうのではないかと心配ではあります。福岡をもっと広く客観的に見つめて、外からの目線には『こんなにいい街なんだ』と認識する事を勧めるべきなんじゃないかなと思いますね。

D そんな危機感も有るなか、ポジティブな面からの変化は何でしょう?

斉藤 やっぱり企業にしても人にしても何かをなそうとする人が集まって来るので、そこで良いコラボレーションが生まれて行くのは確実です。福岡は地元の人の結束も強いですし、それに乗じて関東や海外から人が来られても同じ意識レベルで結ばれたらいい街になって行くでしょう。
福岡の良さを知ったうえで皆が協力して街を作っていけば、日本だけじゃなく海外からみた福岡に成長するんじゃないかと思うし、僕はそうなって欲しいです。


ー ところで、天神を知り尽くした斉藤氏に聞く天神の楽しみ方は何なのだろう。ー


D では、朝から晩まで丸一日を天神・大名・北天神エリアで過ごすとしたら、どんな過ごし方をオススメしますか?

斉藤 皆さん買い物や外食がベースに思われがちですが、意外に建築物とか、目立っていない所に良い文化施設が残っているので、それを自分で探して歩いては。自分で探して歩くと観光スポットが出てくるのが天神のいいところです。お昼ごはんや買い物をする間に色々そういう施設を周ってみてください。夜はやっぱり福岡の地の物、新鮮な魚等の食文化に触れてほしいと思います。

D では、あえて天神・大名上級者に挑戦して欲しい事は?

斉藤 天神で働く若者につながって欲しい。企業でなく個人単位で街の真ん中にオフィスを持っている人が多いのは凄い事だと思うんですね。そういう人達とのつながりって実はふらりと入った飲食店から生まれたりします。ハードルは高いですけど、そうするともっと良い福岡が見えてくるのかな、とか、また来よう、と思えて来るのではないでしょうか。

IMGP1211web ー デザイニング展の期間中、galleriaではgalleriaらしさとデザイニング展のエッセンスの両方を感じられるイベントが開かれる。それらイベントの解説からは、斎藤氏の持つ引き出しの豊かさが伝わって来る。ー


D galleriaではたかはしよしこさんとのディナーナイトや、たかはしさんと横山さんの幕の内弁当のイベントが予定されています。

斉藤 元々スタッフにたかはしさんのファンが居たということと、ある雑談から横山さんの展示会に誘われて『何かしましょう』と話していた事がきっかけでした。そこからたかはしさんと横山さんは元々一緒に仕事をされている方で、それらが瞬時につながって『じゃあ一緒にやるしかないな』となりました。

D 幕の内弁当についての企画に至った経緯は何だったのでしょうか?

斉藤 僕がずっと幕の内弁当に疑問を抱いていて。普通は食べたいおかずの入ったお弁当を選ぶじゃないですか。トンカツとか。何で食べたくもない物も入っているものが無くならないのだろう?なんて。でも、いかにこの小さな箱の中に日本の四季を入れるかだったり、(歌舞伎の幕内で食べる弁当ですから、) 効率も凄く良くて。舞台と舞台の短い時間に食べられて、バランスも取れていますし、ご飯も俵型だから箸で一口サイズに切れたり。
そうして調べて行くほど日本人の食が機能的かつ芸術的で、侘び寂びなんだけど華やかさも持っていると。それで半永久的に使えるプロダクトみたいな認識が出来たんですね。そして日本人のものづくりの精神とつながる所がじゃないかと腑に落ちて。そこから松花堂弁当も面白くて。元々タバコを入れる道具箱に具材を詰めてみたのが由来で、そういう日常使われていたものを弁当箱にしてその中に季節を盛り込んで行くとかという作り方も凄いと。日本人て弁当にこだわるじゃないですか。それにまた改めて気付いて欲しいし食育にもつながっていくのかな、と。それで今回は自分達で幕の内弁当を作ってもらおうと思います。

D つまり、幕の内弁当という優れたフォーマットを使って、現代の僕らがどういうものを作れるのか?

斉藤 完全にプラットフォームですよね。面白いのが、松花堂弁当だとご飯やを置く場所が決まっていて、順番に前菜から回って行くように考えられていて。機能面が美しいんです。

D galleriaは業態としてはカフェで、このイベントの切り口も食ですが、食だけに収まらない印象を受けました。galleria自体がやはりそういう空間なんですね?

斉藤 そうですね。僕ら主催でやるよりも、色んな人が企画を持ち込んで来てくれた時点で、galleriaがただの貸しスペースではない認識があるので。既に出来上がったものが持ち込まれますし、ファッションと食、芸術と食等が既に生まれてきています。

D 併せて、新しいWEBメディアCENTRALのスタート記念としてFUJITOの藤戸さんとCASE REALの二俣さんのトークイベントも開催されます。ファッションと建築という、異業種とも近いとも感じられるお二人の話はどんな話題・内容が予想されますか?

斉藤 僕が場所を提供した理由は、福岡で活躍している人・憧れの人がそこに集まって発信している人達のクオリティが高いのをもっと表に出て欲しいなと。それと彼ら二人でコラボして作ったスツールも先ほどからのものづくり精神に通ずるものが有って。お互いを補い合って作ったものがイタリアのメーカーに受け入れられて量産されたりするのが、小さい所から大きい所に広がるいい例だったので、そういう福岡人の作ったものが世界に出る機会について話して貰える機会は貴重だと思って。

D しかもそのお二人は共に業界では日本中から注目されている存在です。彼らが福岡を拠点にされ続ける理由とは何だと思われますか?

斉藤 うーん。福岡のプラットフォーム自体の期待度と危うさのバランスなんじゃないかなと。ここは発信も出来る場所だし、自分たちがこの街を作らないと、というプライドもある。そういったバランスの取れた街だと思うので。
彼らには先見性も有りながら、自分のベースが完全にブレないものを持っているので、外に出て何かやってやろうと言うより、今居る所から地道にやっていくという。だからあまりここから動かずにやって来たんじゃないでしょうか。

D ということは時流に流される事もなく

斉藤 全く流されてないです。それと、相対的に見て九州男児の特性も有るんでしょうね。長崎と鹿児島っていう。福岡よりも九州と言うくくりで見た時に、彼らは九州に対してプライドを持っている部分も有るんじゃないかなと。

IMGP1238web ー 話を聞いてみて、我々が斎藤氏から生み出される物事に魅了される理由に、
それらが目に映す表面以上に、幾層もの魅力を重ねた厚みを持っている事に改めて気付かされた。
そんな高い積み重ねの上から、斎藤氏にはどんな未来が見えているのだろうか。ー


D 最後に「10年後、このまちは、どうなっていると思いますか?」

斉藤 10年後こうなっている、という想像が難しい。逆に今の福岡のあり方、活動のあり方を考えて行きたいです。近未来を見て動くのが優先でしょう。目の前に見えているやるべきことを積み重ねて10年後どう変わっていくのかだと思うので。だからあえて成長都市であるのに未来が見えていないのが自分の活力源になっているというのは有りますね。何とかしないといけないとか、こうやっていかないと、という方向性が生まれるという。だからあんまり想像はしない様にしています。

D galleriaや斉藤さん個人としての10年後はどうでしょう?

斉藤 今のまま行きたいかな、と。それと僕は海外から福岡を見てみたい。日本じゃない所の視野を広げたいので、もう一回外国に出て、日本・福岡を見直したいです。


ー 自身、そして目の前の風景に真正面から対峙して進んで行く、cafe galleriaと斎藤氏。
それはこの街にとってこの上なく心強い存在だ。ー


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