TOP - JOURNAL - Report / まちの紹介者たちによる、まちのトークリレー

JOURNAL

Report / まちの紹介者たちによる、まちのトークリレー

IMG_6383

「まちの紹介者たちによる、まちのトークリレー」

今年のデザイニング展で「まちの紹介者」として福岡の街にあるオススメの場所やお店をそれぞれの視点で紹介してくれた7組の人たちによるトークリレー。それぞれの紹介者がお店や拠点を構えながらこのまちについてどんなことを考えているのか?

お互いの拠点となる地域のことから、それぞれの日常について、確認し合うようにトークは始まった。なぜまちの中心から離れた場所で洋服屋をやっているのか、なぜお客が少なくても早朝からカフェを開けているのか?そんな話を通して見えてきたのは、以外にもお店の経営者という建前ではなく、自分の住むまちが好きな1人の生活者としての素直な声だった。1人の生活者としてのこの街での自分の経験や実感を伴った、それぞれにとってのまちの「心地よさ」とはどんなものか?7組の紹介者がそれぞれの「心地よさ」をお店や活動を通して実践しているように感じた。

こう書くと、例えばお店であればお客目線も必要ではないか、などの意見も出てくるのかもしれない。例えばある街の行政の人たちが、「どうすればより良い街になるか、人が沢山訪れる観光都市になれるだろうかと?」話していたとする。こうした議論はある地域ではとても切実な問題なのかもしれない。その事を軽んじる気もない。ただこうしたマーケティング的な、そのために何をするべきかという発想にはある前提が欠落しているようにも思う。

それは、とてもシンプルに「自分がどうありたいか、自分が心地よいと感じることは何か。」といったきわめて個人的な問いである。これは利己的な話と思わるかもしれないが、自分の感覚だけを頼りにこうした問いに本気に向き合う事、実践する事は難しく、ある意味でとても勇気のいることではないだろうか。だからこそ、そこに向き合いきれずにマーケティング的な方法論に頼ってしまうのかもしれない。

今回の7組のように個人の顔が見える店主たちが、日々の暮らしの中で、自分にとっての心地よさを実践している姿は清々しいし、何よりみんな楽しそうだ。こうした魅力的で元気な店主が沢山いるまちは、それ自体が魅力的で、そのお店や活動の姿勢に興味をもったり共感した人たちが観光などの言葉とは無縁に自然と集まってくるのではないかと思う。

こうしたまちへの考察は理想主義かもしれない。しかしこれまでやってきた建前を慮る経済や、まちづくりが、それほど効果的な成果を生んでいるとも思えない現在、彼らのようなシンプルな原点回帰が必要なのかもしれない。

それぞれが個人にとってのまちの「心地よさ」を大切にしていけば、まちはもう少し自分にとって身近な存在になるだろう。

今回のような集まりが、これからもいろんな場所で定期的に起こって欲しい。デザイニングもその活動の経過を伝える1つのプラットフォームになれればと思った。

林 洋介(デザイニング展事務局)